Synbio, Bioengineering, Bioinfomatics関連の研究について書いたりするかもしれません。

MENU

合成生物学論文メモ (Dec 2020)

読み流した論文のメモ。黒色はメモ、緑色は感想、赤色は特に面白いと思ったもの。
19報

Synthetic Biology

Transcription/Translation Control

遺伝子回路、転写翻訳制御など
S.cerevisiaeとP.pastorisとでターミネーターのライブラリを作成して、ターミネーターを用いた発現量調節を実装し、代謝産物の生産量調節などへも応用できる事を示した。(Yeast: S.cerevisiae, P.pastoris)
古典的な振動回路の一部(lacI)をdCas9に置き換えたものを実装。発現量の調節はDNAspongeを介して行なった。(Bacteria: E.coli)
位相の性質を実験で調べているのが面白い。

RNA Synthetic Biology

アプタマー、リボザイムなど
大規模なメタゲノムデータから、遺伝子間領域(intergenic region)において二次構造を取るような配列を検索し、sugE遺伝子の制御に関わる新たなリボスイッチ7種を同定し、実験的に制御能力を実証。(Bacteria: S.aureus)
まだこの方法でも良い感じにリボスイッチが見つかるのね。

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など

Optogenetics

光駆動型ツール、蛍光イメージング、光受容体など、その他〇〇genetics系
現存のルシフェラーゼ53種のアミノ酸配列から作成した系統樹の分岐点におけるアミノ酸配列を最尤推定し、作成した遺伝子をE.coliで発現、タンパク質精製を行うことでかつて存在した可能性のあるルシフェラーゼ7種類を作成した。(Bacteria: E.coli)
ものすごく格好いい研究。
E.coliバイオフィルムを構成するタンパク質ドメイン(CsgA)とミネラル化因子(Mfp3S: mussel foot protein)のキメラタンパク質を青色光応答性のプロモーター(YF1/FixJシステム)下で発現させ、光応答性のバイオフィルム形成システムを構築。光強度によるバイオフィルムの厚さ調節や、バイオフィルムによる環境中の基質の捕捉、欠損部分の修復などが可能。(Bacteria: E.coli)
光強度と厚さで相関が取れているのが凄い。
青色光応答性の二量体化ツール(EL222)、アクティベーター(VP16)、TF(Gal4, Gal80)とを組み合わせて青色光応答性の転写OFF回路を新たに設計し、酵母代謝産物の合成量調節に応用。(Yeast: S.cerevisiae)
既存のTFツールとの比較を行なっているところが好感度高い。
近赤外光に応答してnanobodyとのヘテロ二量体を形成するタンパク質(BphP)を大量(10^9)のnanobodyライブラリを加えたphage displayによって選別&最適化した上で、yeast two-hybridで最適なnanobodyを同定し、近赤外光応答性のヘテロ二量体化ツールを作成。(Yeast: S.cerevisiae, Mammalian cells: HEK293T)
近赤外光ツールの新作。nanobodyを使って、NIR-light受容体の応答の弱さをカバーしていて、細胞内在性のリガンド(bilverdin)のみで十分な応答が得られているのが強み。ただ、nanobodyを使っているので観察しようと思うと結局別の蛍光タンパクが必要。

Protein Engineering

タンパク質工学
  • Self-assembly–based posttranslational protein oscillators
  • Authors: Ofer Kimchi, Carl P. Goodrich, Alexis Courbet, Agnese I. Curatolo, Nicholas B. Woodall, David Baker, Michael P. Brenner
  • Journal: Science Advances
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1126/sciadv.abc1939
  • Institution: Harvard University, University of Washington Seatle, USA
リン酸化の有無によって多量体を形成するキナーゼとホスファターゼを用いて、リン酸化状態の振動回路を作成。
二因子の振動が出来たから次は三因子かな。
  • In Vivo Biogenesis of a De Novo Designed Iron−Sulfur Protein
  • Authors: Bhanu P. Jagilinki, Stefan Ilic, Cristian Trncik, Alexei M. Tyryshkin, Douglas H. Pike, Wolfgang Lubitz, Eckhard Bill, Oliver Einsle, James A. Birrell, Barak Akabayov, Dror Noy, Vikas Nanda
  • Journal: ACS Synthetic Biology
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1021/acssynbio.0c00514
  • Institution: Rutgers University, USA
鉄イオンとの結合によって多量体化するタンパク質を細胞内で多量体形成が起こるように構造を元にした最適化を行った後、作成&抽出したオリゴマーの生化学的特徴を調査し、結果を元に多量体化に必要な最小単位を同定した。(Bacteria: E.coli)
最小単位の同定まで行なっていて、まとまりのある綺麗な論文。

CRISPR/Cas

クリスパー系
dCas12aによるCRISPRiと、連結したSoxSによる下流遺伝子の活性化を実装し、導入するgRNAの種類によってどちらの機能を使うかを制御可能に。(Bacteria: E.coli, P.polymyxa)
回路素子としての使い所が割とありそう。
ターゲット遺伝子の下流に逆向きに配置したT7プロモーターからT7pol-deaminaseによるランダムな一塩基置換を引き起こし、dCas9の物理的なブロッキングで変異箇所を遺伝子の一部に限定した。
in vivoで部位特異的&部分的なランダム変異が入れられるのが強み。デアミナーゼのバリエーションや変異の偏りに改善の余地ありといった感じ。

Metabolic/Signal Pathway Engineering

シグナル経路、代謝経路、酵素工学など
酵母のTCA回路の代謝関連酵素をノックダウンや過剰発現させてチューニングする事で、アセチルCoAとNADPHを下流の産物(3-OH-Propionic Acid)産生のために確保する事に成功。(Yeast: S.cerevisiae)
二種類の酵素(Sm3'H: flavonoid hydroxylase, SmCPR: cytochrome P450 reductase)が関わる代謝経路において、酵素の発現量比を強度の異なるプロモーターの組み合わせライブラリを作成して調節した後、directed evolutionで最適化を行なった。(Yeast: S.cerevisiae)

DNA / Biophysics

DNA、核酸論理回路、ナノスケール構造物など
βシートと芳香族側鎖の凝集による自己組織化能を持つsuckerin-12に対して、非天然アミノ酸(Gly32->pAzF)を導入して自己組織化効率を向上させた他、生化学的特徴(pH, 塩濃度, タンパク質濃度依存性)を調査した。(in vitro)

Biochemistry

生化学系

Alternative Hosts / Strain Engineering

宿主や系統株の開発
dCas9とそのgRNAに結合するMS2-VP64によって転写を活性化させるシステムを酵母株P.pastorisで実装。チミン条件下で転写が抑制されるプロモーターを強発現させて抑制解除する事が可能に。(Yeast: P.pastoris)
P.pastorisはメタノール代謝系で強いらしい、ターミネーターの論文でも使われていた株。
シアノバクテリアでdCas9の干渉を利用したNANDゲートを構成し、gRNAを暗条件応答性のプロモーター(purF)下流で発現させて、暗条件応答性の回路を作成。(Bacteria: S.elongatus PCC7942)
シアノバクテリアだとこういう光応答性の使い方が出来るところのは面白い。
  • Automating Cloning by Natural Transformation
  • Authors: Xinglin Jiang, Emilia Palazzotto, Ewa Wybraniec, Lachlan Jake Munro, Haibo Zhang, Douglas B. Kell, Tilmann Weber, Sang Yup Lee
  • Journal: ACS Synthetic Biology
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1021/acssynbio.0c00240
  • Institution: Technical University of Denmark, Denmark
A.baylyiが特定の配列を持つ直鎖状DNAを取り込む際に環状化させる性質を利用して、ハイスループットな形質転換が可能なプラットフォームを作成。(Bacteria: A.baylyi)
既存の形質転換手法を置き換えるほどのメリットは無さそうだけど、この技術を元に何かは出来そう。