Synbio, Bioengineering, Bioinfomatics関連の研究について書いたりするかもしれません。

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合成生物学論文メモ (Mar 2020)

読み流した論文のメモ。黒色はメモ、緑色は感想、赤色は特に面白いと思ったもの。
26報

Synthetic Biology

Transcription/Translation Control

遺伝子回路、転写翻訳制御など
bioinformaticなゲノムスクリーニングで様々な菌種から同定した化学シグナルベースの遺伝子発現誘導回路をwetの実験で性能評価し、E.coliなどの他のホストにおける機能保存を実証。(Bacterial: E.coli, P.putida)
合成生物学での理想的なツール開発の道のりという感じ。
代謝酵素をsensorとして、入力分子の代謝産物をinducerとして設計された、精度の高い出力調節能を持つquorum sensingシステムの実装。(Bacterial: E.coli)
代謝工学と遺伝子回路のハイブリッド。似た様な流れに期待が高まる。
feline calcivirus由来のmRNA翻訳活性制御タンパクVPgをmRNAの5'モチーフ結合タンパクMS2CPと組み合わせることで、mRNAの5'モチーフ配列デザインのみで制御可能なmRNA翻訳制御ツールを開発。(Mammalian: HeLa, hiPS)
発現量調節可能な遺伝子増幅回路を組み込むことで、哺乳細胞のストレス応答におけるUPR(unfolded protein response)の発現量をGFPによって定量可能なプラットフォームを開発。(Mammalian: HEK293T, H4 neuroglima)
バクテリアのバイオセンサーなどでよく使われる遺伝子回路の応用形式を哺乳類細胞に持ち込んだ研究。哺乳類細胞のシグナル伝達系への遺伝子回路応用、注目。
Notchシグナリングレセプターに切断活性部位、TFを結合したNotchシグナル定量ツールsynNotchの非特異的活性を減少させた改良型synNotchの開発。(Mammalian: HEK293T)
上に同じく哺乳類細胞のシグナル伝達系への遺伝子回路実装。
プロモーターおよびRBSの配列候補の定量的なスクリーニング結果と、そのデータを用いた統計モデルによる最適なパーツの組み合わせ予測から、高性能なバイオセンサーを設計、実証。(Bacterial: E.coli)
AHL結合型の転写制御タンパクLuxRのleakinessを、わずか4ラウンドの方向性進化で大きく減少させ、遺伝子回路におけるleakinessのシンプルな手法での改善可能性を示唆。(Bacterial: E.coli)
LuxRの構造に特異的な可能性もあるが、TFツールの改善方法として一般化できれば強力。

RNA Synthetic Biology

アプタマー、リボザイムなど
Toehold switchの超改良版、ターゲット配列の1塩基多型、1塩基変異を識別可能なRNAswitch(SNIPR)の開発。(Cell-free, Bacterial: E.coli)
立体構造の自由エネルギーベースのRNAswitchで塩基レベルの識別能は凄過ぎ。in silicoデザイン用のソフトウェアも公開されている。
stiff-stilbene(342/372nmの光照射で可逆的に異性化する化合物)をリガンドにとるアプタマーをSAM-Iリボスイッチからデザインし、optogenetic制御可能なRNA翻訳スイッチを開発。(Bacterial: E.coli)
翻訳量のON/OFFレンジが~2倍と小さいのが惜しいところ。
リガンド-温度反応性のリボスイッチにおける温度特異的構造変化を、塩基ごとの変異体の塩基対形成への影響から定量化。

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など
既存のCell-free CYA(cyanuric acid)センサーを代謝酵素群と組み合わせることで、atrazineのCYAへの代謝とCYAの検出を介した間接的なCell-freeセンサーを開発。(Bacterial Cell-free)
Cell-freeセンサーと代謝工学との融合。

Optogenetics

光駆動型ツール、蛍光イメージング、光受容体など、その他〇〇genetics系
  • A progesterone biosensor derived from microbial screening
  • Authors: C. Grazon, R C. Baer, U. Kuzmanović, T. Nguyen, M. Chen, M. Zamani, M. Chern, P. Aquino, X. Zhang, S. Lecommandoux, A. Fan, M. Cabodi, C. Klapperich, M.W. Grinstaff, A.M. Dennis & J.E. Galagan
  • Journal: Nature Communications
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1038/s41467-020-14942-5
  • Institution: Boston University, USA
ステロイド代謝バクテリアRNA-seqデータ解析、in vitro機能解析から同定したallosteric TFをquantum-dot FRETと組み合わせ、progesteroneのバイオセンサーを開発。(Bacterial Cell-free)

Protein Engineering

タンパク質工学
3種類のオリゴマータンパク質をリンカータンパクで架橋する事で、自己組織化する20面体のタンパク質ケージを新たにデザイン。(Bacterial: E.coli)
split-mCherryを用いたin vivo/vitroでのインテインの機能スクリーニング、新たに得られたインテインのライブラリからorthogonal setを同定、インテインベースのタンパク質切断/結合回路を作成。(Bacterial: E.coli)
高効率なスクリーニング方法が確立できるとやはり強いという印象。

Metabolic/Signal Pathway Engineering

シグナル経路、代謝経路、酵素工学など
グラム陰性細菌G. sulfurreducensでつくられる導電性タンパクナノワイヤーを、オペロンの各パーツの発現量調節を通してE.coliで効率よく生産させることに成功。(Bacterial: E.coli)
自己抑制型と他者抑制型の二種類のQSネガティブフィードバック回路により、最終産物(naringenin)への連続的な代謝を行う二種類のE.coli系統を、生産量が最適化される様な人口比で安定的に培養することに成功。(Bacterial: E.coli)

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など
  • Decorating bacteria with self-assembled synthetic receptors
  • Authors: N. Lahav-Mankovski, P. Kishore Prasad, N. Oppenheimer-Low, G. Raviv, T. Dadosh, T. Unger, T.M. Salame, L. Motiei & D. Margulies
  • Journal: Nature Communications
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1038/s41467-020-14336-7
  • Institution: Weizmann Institute of Science, Israel
ODN-small-molecule conjugatesの一部にtriNTAを付加し、E.coli上のOmpCに添加したHis-tagをターゲットに凝集させた上、凝集したODNと相互作用する別のODNに機能単位を付加し、目的の膜機能を実現。(E.coli)
ODN2に加える機能のデザインの幅がどの程度なのか気になる。

Computational Biology

細胞のイメージング結果からoptogeneticなinput量を計算し、リアルタイムでフィードバック制御を行うことで、酵母を用いたパターン形成を実現。(Eucaryotic: S. cerevisiae)
生化学カスケード反応の線形モデル評価において、従来のベイズ情報量基準の最小化を元にした方法が未知部分の反応回数を過大評価する問題を、parameter identifiabilityを元にした新たな評価方法を取り入れる事で改善。
新たな方法は反応回数の過小評価が起きがちな様なので、両方の評価を元に反応回数を定めれば良さそう。

Bioinformatics

CRISPRiおよびCRISPR-delによるlncRNAのノックダウンにおいて、sg/pgRNAを候補配列群の中から高効率でスクリーニングするツールを開発。
蚊のゲノム中におけるCas9-based gene driveの潜在的なターゲット配列を、一塩基多型の出現確率などによるスコアリングで選定。

General Biology

E.coliにおけるT7発現システムの細胞毒性がT7RNAポリメラーゼそのものではなく、T7発現システムの産物とE.coli内の恒常発現遺伝子産物との間でのリソース競争によるものであることを解明。(E.coli)
T7の細胞毒性の影響でクローニングが上手くいかなかったと言ってT7プロモーターの変異体を使っているが、良い手はないか。
E.coliの遺伝子(rrnBオペロン)の水平伝播における、挿入位置の影響とH-NSの干渉についてのFACS&発現量解析。