Synbio, Bioengineering, Bioinfomatics関連の研究について書いたりするかもしれません。

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合成生物学論文メモ (Apr 2020)

読み流した論文のメモ。黒色はメモ、緑色は感想、赤色は特に面白いと思ったもの。
42報

Synthetic Biology

Transcription/Translation Control

遺伝子回路、転写翻訳制御など
ΦC31インテグレーゼを用いた人工遺伝子回路におけるメモリを植物細胞で実装。(Plants: N.benthamiana)
growth rateがポジティブフィードバック回路のヒステリシス性に独立のfeedbackを与えていることを数理モデルとwetの実験の両方で解明。(Bacteria: E.coli)
遺伝子回路の分かっていたようで分かっていなかった部分の厳密な解明。
N. aromaticivoransにおいてNOV1, NOV2の二種の遺伝子が複数のstilbene誘導体の共有結合切断に関わると報告されていることを元に、ゲノム中からstilbene検出に関わるTF(常時抑制型)としてNOV1上流のSaro_0803を同定、Saro-Nov1オペロンからstilbeneバイオセンサーを構築。(Bacteria: E.coli)
PWMとMPCによるトグルスイッチの物理的フィードバックを介した、大腸菌集団の発現コントールシステムの改良版。(Bacteria: E.coli)
TetRホモログであるPhlFベースのネガティブフィードバック回路を構築し、TetRとPhlFによるorthogonalな複数遺伝子発現制御システムを新たに提出。(Mammalian cells: HEK293T)
複雑系遺伝子回路の新作。
遺伝子論理回路にtoehold switch(ハイブリダイゼーションと立体構造変化による翻訳制御を行うriboswitch)を用いて、転写誘導と翻訳制御の二段階制御することで、回路のK値を可逆的にチューニング可能に。(Bacteria: E.coli)
制限はあるものの、回路の導入後にチューニングが可能な革新的手法。
ランダムにデザインされたYeastプロモーターのハイスループット定量化データを用いて、プロモーター配列から活性レベル予測するCNNをR2値~0.8の精度で実装。更に学習済みCNNを用いてプロモーターをデザイン。(Yeast: S.cerevisiae)
シンプルで強力なスキーム、data-drivenのお手本のような研究。

RNA Synthetic Biology

アプタマー、リボザイムなど
ヒト上皮細胞活性化因子をターゲットに、分子動態シミュレーション、自由エネルギー計算による相互作用予測を介したRNA aptamerのデザインおよび最適化と、wet実験での実証。
ヒト腸内細菌などにみられるczcDリボスイッチをベースに、Fe(II)を検知するリボスイッチを開発。(Bacteria: E.coli)

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など
Cell-free系のフリーズドライにおいて、Mg2+イオンが細胞溶解液中の酵素とアロステリックに結合することで、フリーズドライ中に起こる酵素と基質との不活性な結合を防いでいることを解明。(Bacterial cell-free)
Cell-free系でのタンパク質合成における反応溶液の最適な組成を求めるための機械学習的手法の開発。(Bacterial Cell-free)

Optogenetics

光駆動型ツール、蛍光イメージング、光受容体など、その他〇〇genetics系
細胞膜再形成に関わるBARドメインタンパクをiLIDシステムに組み込むことで、optogenetic制御可能なµmスケールの膜突出/陥没を実装。(Mammalian cells: U2OS, COS7)
iLIDシステムにRhoAGEFの一つであるLARGを組み込んだoptogeneticツールを用いて、RhoAシグナル経路由来の細胞溝形成における分子動態を解明。(Mammalian cells: RAW 264.7)

Protein Engineering

タンパク質工学
  • De novo design of protein logic gates
  • Authors: Z. Chen, R.D. Kibler, A. Hunt, F. Busch, J. Pearl, M. Jia, Z.L. VanAernum, B.I.M. Wicky, G. Dods, H. Liao, M.S. Wilken, C. Ciarlo, S. Green, H. El-Samad, J. Stamatoyannopoulos, V.H. Wysocki, M.C. Jewett, S.E. Boyken & D. Baker
  • Journal: Science
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1126/science.aay2790
  • Institution: University of Washington, USA
de novo設計されたorthogonalなhelix bundleによるタンパク質相互作用を介した、論理回路の実装。
翻訳後の論理回路の幅がここまで広くなれば、転写制御とも合わせた多重制御回路も割とすぐ出来そう
校正酵素MutSにS-S結合を形成する変異を加え、MBP(maltose binding protein)と融合させることで酵素の安定性、発現量を改善し、作成した変異型MutSを用いてDNA合成時のエラー修正を低コストで実現。(in vitro)
アルデヒドヒドロゲナーゼの補因子の親和性をNADP+からNAD+へと変化させる問題において、変異体のタンパク質結晶構造予測を介して変異を加える残基を数残基の精度で予測し、また、得られた変異体の分子動態シミュレーションから変異デザインの法則を分析。
  • Improved GPCR ligands from nanobody tethering
  • Authors: R.W. Cheloha, F.A. Fischer, A.W. Woodham, E. Daley, N. Suminski, T.J. Gardella & H.L. Ploegh
  • Journal: Nature Communications
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1038/s41467-020-15884-8
  • Institution: Harvard Medical School, USA
レセプタータンパク質PTHR1のリガンドPTHに、PTHR1と結合するナノボディを融合させることでPTHの感度および特異性を改善。(Mammalian cells: HEK293T)

CRISPR/Cas

クリスパー系
E.coliにCRISPRaによる遺伝子発現システムを導入した上で、プロモーター/σファクターを介した発現レベルのチューニングを可能にし、ターゲット配列のデザインルールを解明。(Bacteria: E.coli)
かなり広範囲までデザインルールの探索を行なっている。
Cas12aのcrRNAのスクリーニング工程を開発し、crRNAのrepeat配列とspacer配列との間でのoff-targtetなハイブリダイゼーションがCas12aの機能効率を低下させていることを解明。(Bacteria: E.coli)
4種のCas12a(As, Lb, Fn, Mb)における変異のPAM配列認識特異性への影響の解析と、LbCas12aの変異体を用いたPAM配列の選択肢の拡張。
Cas9とssDNAとを化学共役させ、ssDNAと挿入配列となる別のssDNAとをhybridizationさせることで、Cas9の編集効率を改善。
Cas12a(Lba Cas12a)がdsDNAに対してトランス切断活性を持つことをDNA probeを用いて実証。(in vitro)
Pb2+イオン(pM)、Acinetobacter baumannii(1細胞)、miRNA(fM)をそれぞれターゲットに、ssDNAを中間体としてLbaCas12aを用いて検出を行う方法を開発。(in vitro)
プロテオーム全体を潜在的なターゲットに取ってgRNAライブラリを作成し、Yeastの適応度に影響する700以上の変異を同定。(Yeast: S.cerevisiae)

Metabolic/Signal Pathway Engineering

シグナル経路、代謝経路、酵素工学など
σ70に比べて内在性の回路とのcrosstalkが小さいσ54依存TFであるDmpRを用いた、細胞状態の調節と、それを用いた代謝酵素のハイスループットスクリーニング技術の開発。(Bacteria: E.coli)
代謝に関わる一連の遺伝子カセット周辺のnon-coding領域をランダムに編集することで、代謝産物の収量を向上させることに成功。(Eukaryotes: S.cerevisiae)
クロマチン状態の変化が関わることが示唆されている&今の所酵母でのみ実装されている手法らしいが、大腸菌でも可能?
分裂酵母(S.pombe)を重水中で培養した際に成長率および細胞骨格形成異常に伴う形態の変化を起こすことの解明と、形態変化に関わるシグナル経路に変異を加えて重水中での正常な生育を可能に。
発想がやばくて好き。

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など
チャンバーに固定化したmRNAから、チップ上でE.coliリボソームのsmall subunitを再構成。small subunitに関わるr-protein、assembly factorの凝集の順序を解明。(Bacterial cell-free)
内在性の凝集システムであるSpyCather/SpyTagとBDP-DBCOによる誘導性の凝集システムであるSPAACとを、E50F50による人工細胞内膜と融合して同時に発現させることで、二種類の凝集プラットフォームを両立。(Bacteria: E.coli)
M.alvus由来のpyrrolysyl-tRNA合成酵素アミノ酸結合部分にタンパク質構造に基づいた変異設計を加えることで、アミノアシル化の効率を上げ、cell-free系でin vivoと同等のタンパク質生産性を得ることに成功。(Bacterial cell-free)

DNA / Biophysics

DNA、核酸論理回路、ナノスケール構造物など
E.coliのゲノムに対して制限酵素(PfAgo)を用いてnickingを加えることにより、DNAデータストレージを実装。
内部が正に帯電しているAaLS-posキャプシドシステムにおいて、導入するRNAの二次構造安定性がencapsulation効率を大きく下げることがあることを解明。(Bacteria: E.coli)
  • Programming the Sequential Release of DNA
  • Authors: D. Scalise, M. Rubanov, K. Miller, L. Potters, M. Noble & R. Schulman
  • Journal: ACS Synthetic Biology
  • Year: 2020
  • DOI: 10.1021/acssynbio.9b00398
  • Institution: Johns Hopkins University, USA
DNA断片のtoehold部分を介したハイブリダイゼーション競争(熱力学平衡)を利用して、一本鎖DNA断片をインプットする度に設計された一本鎖DNA断片が順に解離するシステムを開発。

Biochemistry

生化学系
人工的なdeoxynucleoside triphosphate(dNaMTP, dTPT3TP)を組み込んだコドン/アンチコドンを利用した翻訳システムの実装。(Bacteria: E.coli)
人工的なセントラルドグマの開発、アツい。

Computational Biology

Bioinformatics

SBOLの簡易版
プログラミングしない人向けという感じ
哺乳類細胞において、CDSおよびUTRにおけるGC含有率とそれに伴うスプライシング効率の変化が遺伝子発現に関わる影響を解析。(Mammalian cells: HEK293, HeLa)

General Biology

tRNA-FRETを用いた神経細胞における翻訳過程および翻訳部位のイメージングと定量化。
RNAseq解析、knockoutを介し、マウスに見られるのlncRNA(Sirena1)の内在性siRNAとしての機能と、間接的なミトコンドリアの細胞内拡散に関わる機能を解明。
Drebrin-like protein(DBNL)を対象に、蛍光相関分光法によってDBNLモノマーのコロイド粒子半径を測定し、また、生理学条件下でDBNLの二量体が優勢であること、DBNLのN末端側が二量体形成に寄与していることを実証。