Synbio, Bioengineering, Bioinfomatics関連の研究について書いたりするかもしれません。

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合成生物学論文メモ (Jan 2020)

読み流した論文のメモ。黒色はメモ、緑色は感想、赤色は特に面白いと思ったもの。
21報

Synthetic Biology

Transcription/Translation Control

遺伝子回路、転写翻訳制御など
AtzRを用いた高感度cyanuric acid(CYA)センサーのoptimizationとcell-freeでの実用。(E.coli, Bacterial cell-free)
AtzRはdimer×2のtetramerとして機能するTFで、片方のdimerはreverse方向下流の遺伝子(atzR)のリプレッサー(2つのrepressor binding sitesにそれぞれ結合)としてはたらき、もう片方のdimerはfoward方向下流の遺伝子(任意)をCYA存在下で活性化するアクティベーター(3つのactivator binding sitesがあり、通常時は下流の2つ(σファクターブロックにより遺伝子OFF)、CYA存在下で上流2つにdimerがそれぞれ結合)。CYA検出バイオセンサーとしての感度の高さを示した他、フリーズドライとrehydrationによるportabilityを実証。

RNA Synthetic Biology

アプタマー、リボザイムなど
fluorideRNAアプタマーの転写ONswitchをフリーズドライのCell-freeシステムで実用化(E.coli cell-free)。遺伝子回路の最適化はもちろん、Cell-free反応環境の最適化まで行い、実用レベルの検出能を実現。想定される実際のサンプルを用いたデモも。(E.coli cell-free)。
応用可能性を示すだけの応用例が多い中、ここまで最適化をしているのは珍しい(というより、そうでもしないと最早論文にならない?)。
アプタマーmRNAとアプタマー結合型タンパク質から成る、翻訳OFF-switchツールボックス(Mammalian)。MS2CP(V29I)(MS2 bacteriophage coat protein), scPP7CP(scaffold-embedded PP7 bacteriophage coat protein), U1A(splicesome-related RBP)のエンジニアリングと、MS2CP, PP7CP, U1A, L7A2, LIN128Aのorthogonality、in vitroの抑制能を実証。。
OFFの実証だけなので、反転スイッチも出来そう。ヘアピン部分のデザインの幅は広いが、制御ターゲットのデザインの幅はToehold Switchの方が広い気が。もしくは、両方を上手く組み合わせられるか?
筆者開発のLOOPER(ligase-catalyzed oligonucleo- tide polymerization, 修飾済みのDNA断片をライゲーションすることで修飾されたDNA鎖をデザインする技術)を利用したLOOPER-SELEX(LOOPERでデザインしたアプタマーの指向性進化)による、修飾付きaptamerの立体構造-機能関係および進化に関する解析。
TMR3(tetramethylrhodamine binding aptamer 3)とそのリガンドであるTMR(化学染料absorption: 535nm, emission: 573nm)との複合体のNMR解析。
イントロでアプタマー研究と定量化の流れについて詳しくまとめられている。

Cell-free / Reconstruction

無細胞系、再構成など
Cell-free反応において、アミノアシルtRNA合成酵素に消費されるNTPの再生を行う3種類のキナーゼ群を、1種類のPPKで置き換え(Cell-free)。
Cell-free反応のモデル化の次元下げられることになるが、再生に必要なポリリン酸消費が激しいなのがネックか。
Hisタグ結合型アプタマーを共有結合させたポリアクリルアミドからなる粒子を用いて、Cell-free系でのIPTG誘導型のタンパク質発現系の実装し、タンパク質発現系を少なくとも16日間維持することに成功。

Optogenetics

光駆動型ツール、蛍光イメージング、光受容体など、その他〇〇genetics系
BRETベースの光源分子の開発とそれを用いたblue-light感受性システムの時空間的コントロール(Mammalian)。Emission lightを定量化した上で、BRETの光源(~470nm)を使って他のblue-light感受性分子を活性化。
BRETの光供給体と光受容体を、蜘蛛糸タンパク由来の弾性リンカー(GPGGAx8)で架橋することにより、高解像度な分子間張力センサーを開発。BRETの光ドナーに発光タンパク(Nanoluc, Em:460nm)と光受容体に蛍光タンパク(mNeonGreen, Ex:506nm,Em:517nm)を用い、二つを蜘蛛糸タンパク由来のflexible linker(GPGGAx8)で架橋。Em:460nmとEx:506nmの違いはあるが、Nanolucの小ささ(半径13Å)を活かしてより近距離に分子を運ぶことが可能。応用例として、vinculin-actin間の生細胞内張力イメージング。

Protein Engineering

タンパク質工学
6ペアのcoiled-coil(33 a.a., 4周コイル)間のタンパク質相互作用ツールボックス(Mammalian)。HEK293T内で6ペア間のorthogonalityが確認されている他、ヘリックス形成基にAをS or Qに変異させるか、またはコイルペプチドを連結することで相互作用の強度を調整することが出来る。応用例として、HEK293T内での細胞小器官の色分け、CRISPR-dCasベースの遺伝子発現量の調節、遺伝子発現誘導(rapamycin-induced(FKBP/FRBシステム), abscisic-acid-induced(ABI/PYL1システム), blue-light-induced(CIBN/CRY2システム))の強化を実証。

DNA / Biophysics

DNA、核酸論理回路、ナノスケール構造物など
Toehold付きDNAフラグメント間のハイブリダイゼーション競争を使った分子論理回路ツール(in vitro)。インプットからアウトプットまでをhybridizationのカスケードの様にして、アウトプットの蛍光/quenchingを測定。
RNAでやったら転写翻訳も絡められて面白そうだが、二本鎖の安定性が足りなさそう。

Biochemistry

生化学系
蛍光タンパク質(Dronpa2)のphotoexcitationにおいて、静電気的および立体化学的作用が発色団の異性化にどのように関わるのかを定量化。陰イオン性phenolate-ringの置換基に電子吸引性の高いものを付加するほど、吸収波長は短く(遷移エネルギーが高く)変化するが、QY及び励起エネルギーは置換基なしのwt辺りがピーク。

Alternative Hosts / Strain Engineering

宿主や系統株の開発
シアノバクテリア(Anabaena 7120)のプラスミドキャリア、タンパク質発現株としての可能性を実証。
ストレプトマイセス(S. blastmyceticus)や耐熱性放線菌(M. thermotolerans)由来の、ラクタム系の代謝に関わる遺伝子群をAnabanea 7120で発現、機能実証。また、Anabaena 7120で既存のプラスミド(pDU1, pANS, RSF1010)とcotransformation可能なlow-copyプラスミドpCC7120ζを確立。
E.coliのホスト遺伝子の編集とリコンビナーゼ回路を利用した長寿命E.coliの開発。
ホストのいくつかの寿命遺伝子をノックアウト、過剰発現させ、幅広いE.coli株での長寿命化を実証。追加で、リコンビナーゼ(A118)と反転ファクター(GP44)を用いた寿命遺伝子の調節回路を作成し、応用例としてbutyrate生産系を実証。

Computational Biology

オープンソースの細胞自己組織化シミュレーター。シミュレーターのプラットフォームを作ってから、ランダムな初期値でシミュレーションを開始。形成されたパターンを解析しつつ、シミュレーション条件を拡張して、一般化していくという手法。
アクロバティックなやり方。

Bioinformatics

Allele-specific scRNA-seqデータを用いた遺伝子発現ノイズの統計解析。intrinsic/extrinsicノイズの定義は古典的な方法(M. Elowitz 2002)の派生。

General Biology

分裂酵母中のヘテロクロマチン化因子としてはたらくAmo1(NUPL2)タンパクの決定と、ヘテロクロマチンの核縁凝集性がヒストンのターンオーバーを抑制し、ヘテロクロマチンの安定性のポジティブフィードバックに寄与している事実の解明。
Splice-switching antisense oligonucleotides(ASOs)が、off-target配列とのハイブリダイゼーションを通じて、スプライシングエラーを誘導することを実証。
cryEMを用いたγ-チューブリン環状複合体(γ-TuRC)の構造解析。GCP2及びGCP3による構造的コアに対し、GCP4,5,6からなるサブユニットは可変性が高く、様々な制御ファクターとの結合に対応する。
微小管核形成において、γ-TuRC(γ-Tublin Ring Complex)とそのリクルーターであるAuguminのpurificationと、augumin-γ-TuRC interactionのin vitro再構成。
cryoEMのsubstrateにグラフェングリッドを用いて、2.6Å解析能を実現。